たとえば、この盾だけどね・・
2001年にイタリアで開催されたビアンキカップのワールドマッチでプラクティコォ イヴェントの一等賞だな。
好きな人がいたら譲ってほしいと言われて預かってはいるものの、値段を決められないのさ😅
自分ならコンくらい出すゾ!!
と、金額を言える人がいたら、
ここで知らせてほしいねん。
したらミッキさんに聞いてみるよ。
そーねー・・たとえば200ドルとかかなぁ・・・
他にもイロイロあるからボチボチ見せるっち。
by 高く売ってあげたいが、
安く買ってもらいたい板挟みのワシ💦
これは‼️
お金の問題というよりも、ミッキーさんの成果物を買うというのがなんだか心苦しいのです。
例えばミッキーさんと同じ試合に一緒に出られた方が、試合後にミッキーさんから
「盾をもらうのがゴールではないから、これは君にあげるよ」とか言われたらものすごい嬉しいし価値があると思うのです。
そんな方に受け取って欲しいと思うのです。
ミッキーさんの1等賞の楯。 200ドルは出せるけど、なんとなくその楯の重さに耐えられず、手に入れたいという気持ちになれません。その時の現場に立ち会っていたとかだと、また違うのかもしれないんですけど。 申し訳ないです。
ルシファさん、お写真を拝借
雪の匂い
その2
仕事と頽廃と崩壊を忘れ見惚れていると声が掛かった。
「社長、こんなのもありますよ」
大き目のプラスチックのケースだった。
蓋を開けると、ルガーのアクセサリーが入っていた。
スネイルドラムの弾倉、革のホルスターの付いた木製ストック、予備の弾倉、4インチ用の革のホルスター、
フルチェッカの木製グリップ、8インチのサイト調整用の工具、その他。
スネイルドラムとホルスターストックは2個づつある。
軍装マニアではないのでよく分からないが、ひょっとすると大戦中のオリジナルと戦後のレプリカかもしれない。
「これは久し振りに大当たりだぞ。トイガン屋に売ると50万にはなるかもしれない」
興奮していた。
オモチャと言う物は侮れない。
今迄にローレックスとか金の延べ板とかが出て来たこともあったが、これ程興奮はしなかった。
商品として興味はあったが、トイガンは趣味なので心を揺らす。
作業を他の社員に任せ、ルガーとアクセサリーの写メを撮り始めた。
iphoneだからキレイに写るはずだ。
撮り終わる頃には故人とこの家の印象が全く変わった。
頽廃と崩壊しかない家と人間としか思っていなかったが、
実は暖かなものがそっと灯っていたのかもしれない。
衣食住には興味が無くひたすらルガーに愛情と関心を注ぎ込んでいたのだろう。
トイガン好きとして、欲しくてたまらなかった。
遺族は勿論、社員も正確な価値と値段を分かっていない。
私が処分しておくと言っても誰も不審に思わず、“処分”させるだろう。
知らない人間にとってはオモチャに過ぎないのだ。
オモチャは子供の物で大騒ぎする物ではない。
「社長、また大発見です」
と言われ我に返った。
この社員が現れなかったら間違い無く私の物にしていた。
それ位魅力的な物ばかりだった。
いや魔力を持った物ばかりだった。
持って来たのは本と雑誌と紙袋だった。
雑誌は日本のガンの雑誌でルガーが載っているものばかりだ。
本は洋書で、3冊がケースに入っている。
「ん~、“ぴすとるぱらべらむ”だな」
英語で書かれている様だ。
袋の中身を出してまた驚いた。
“ピストル・パラベラム”の日本語訳だった。
レポート用紙数百枚はあるだろう。
キッチリとした字で書かれている。
私は圧倒され、先程の暗い欲望は跡形も無く消えた。
この老人は一体どんな人物だったんだろう?
翌日、この発見の報告書を作り、依頼主に連絡した。
値段を話すと驚き喜んだ。
時間が掛かってもいいから出来るだけ高く売ってくれと言った。
支払いはそこから取ってくれと言われた。
支払いが遅くなるのは辛いが、私も正体、特にアクセサリー類の正体と値段を知りたかったので自分を納得させた。
翌日、社員一人と一緒に獲物を持って何回か行ったことのある中古トイガン屋を訪れた。
事情を話し、更に私の希望としてまとめて買い取って欲しいと言った。
これだけのコレクションを四散させるのは惜しい。
店主も納得してくれ、何人かのお客さんに声を掛けてみる、誰もいなかったら自分が買い取ろうと言ってくれた。
数日後に店主から連絡が入り、是非買い取りたいお客さんがいるとの事。
次の定休日に店で会う事にした。
ルガーマニア氏は終始感嘆のうめき声を上げ続けた。
「信じられません、こんな凄いコレクションがあるなんて。大戦中の物は全てオリジナルです。しかも現在ではもう手に入らない状態の良い物ばかりです。
「リプロダクション、リプロ物は全てモデルガンに合うように加工してあります。
「ZEKEのモデルガン、タナカのエアガンのブルーイングも素晴らしい。
「一番素晴らしいのは、この“ピストル・パラベラム”の翻訳です。噂でもこれを訳した人を聞いたことがありません」
ルガーマニア氏はそれぞれに値段を付けて行った。
もう手に入らないZEKEの3丁は発売価格にかなり色を付けた値段だった。
合計金額はトイガン好きの私でもとんでもない金額になった。
この老人について尋ねるとルガーマニア氏も店主も全く知らず、噂でも聞いたことがないと言った。
依頼主に連絡するとまた驚き、それでいいと納得した。
中古トイガン屋に仲介料として規定の委託料を払い、今回の遺品整理料を引いても、かなりの金額だった。
ルガーマニア氏はお礼として“ピストル・パラベラム”の翻訳のコピーを私と店主にくれた。
老人の件もありこの翻訳は是非読んでみたかったから、大変有難かった。
今回の獲物の値段を社員に発表すると、全員驚いた。
そんな高いんだったらネコババしちゃって皆で高級大宴会を開けたのにと残念がった。
私は正直者、心がキレイな人間かと言うとそうではない。
悪事を働けるほどの度胸が無い小心者にすぎない。
なんとか悪事の方へ入り込まない様にしているだけだ。
まぁそのせいだろうな、
おかげで遺品整理の仕事をしても大金のボーナスを払うお客さんにも会ったことがない。
“正直の頭に神宿る”ではない。
“粗にして野だが卑ではない”だな。
恐らくあの老人もそうだったのであろう。
家族を決して顧みることはなかったのだろう。
だがルガーへの探究心、愛情には誰よりも満ちていた。
そのために“卑”に陥らなかったのだろう。
私が雪の匂いが好きなのも、イマイチきれいでない心が求めているのかもしれない。
そんな悪事に手を染める勇気が無い私に与えられたものがある。
今日のバイト君始め、社員に悪い事をするな、いい事をしろ、と自分の事を棚に置き偉そうに言える事だ。
MIZさん、お写真を拝借
雪の匂い
その1
「正直は一生の宝、これは覚えておけ。
正直者が馬鹿を見る、馬鹿を見た方がいいんだ。
くどいようだが、もう一度繰り返すぞ」
「はい、社長」
「それが死んだ人の物でも、所有権が相続人に移るんだ。
黙っていれば確かにバレない、これは本当だ。
でも、バレれば間違い無く、100%間違い無く窃盗罪になる。
例えば、金無垢のローレックス、いや最近じゃロレックスか、中古屋か質屋へ持ってけば今なら100万で買い取ってくれる。
そうなると100万円で窃盗罪を買い、一生100万円のボーナスを手に出来なくなる。
時計とか貴金属、見つけたら写メを撮って必ず、いいか、絶対必ずだぞ、依頼主さんに確認するんだ。明らかに安物で使い捨ての様な物でもだ。
何か見つけても不要だから適当に処分してくれと整理を始める前に言われても、
金目の物を見つけたら必ず依頼主さんに確認するんだ。
金持ちかどうかは、見掛けや家では決して分からない。
売って料金にしてくれと言う場合もあれば、好きにしてくれと言う場合もある。
どんな場合でも、中古屋で見積もりを出してもらい、依頼主さんに再確認する、これを何があっても忘れるな。
人様の物には、どんなゴミでも屑でもだ、その価値が分かっても分からなくても、手を付けるな。
それに、自分達には分からない価値があるかもしれないんだ。家族の思い出の品で何十年も行方不明だった物かもしれない。
徒や疎かにしてはいけない。絶対に疎かにしてはいけない」
「はい、社長」
重要な事だから事前に何回もこのバイト君にも話している。
またかよ、うるせぇヲヤヂだと思われようが関係無い。
遺品整理、それに中古品や骨董品の買い取りではズルをしようとすればいくらでも出来る。
ウチみたいな小さな所が信頼を失えば廃業へ一直線だ。
それに、“情けは人の為ならず”だし、“正直の頭に神宿る”だ。
いつの日にか自分にも幸運が巡ってくるだろう。
いや、
不運から救ってくれればいい、それで十分だ。
欲が無いわけではない。
何十年も人間をやっていると、健康が一番大事だと分かる。
交通事故や伝染病に襲われるか否かは、最後は運に左右される。
大金を手にするには、それに相応しい犠牲が必要だ。
一番一般的な犠牲が健康、これは間違い無い。
体の不快感と苦痛、これが子供の頃から嫌いなんだ。
それに小心者、意気地なしだから悪い事をする勇気も無いな。
それともう一つ。
時計や貴金属を見る目を鍛えた。
特に宝石は本物か偽物か分かる程度の実力を付けた。
間違って捨てると後で取り返しがつかないことになる恐れがあるからだ。
気付かずに捨ててしまった物が依頼主から高い宝石だと言われても、
価値が分かっていなければ私達の方では反論出来ない。
今日、これを改めて自分に言い聞かすのは雪が降ったからだ。
私にも経験があり、その時も雪が降っていた。
好きにしていいと言われていたので、もう少しで好きにするところだった。
今日も雪の匂いを感じ、思い出した。
あの日も雪の匂いを感じた。
あの日は事故物件の整理だった。
男性、80代、独居、死後1週間。
冬だったので御遺体は傷んでいなかった。
担当の民生委員が訪れ発見した。
東京郊外、都心まで1時間の通勤圏、築70年の戸建て。
家も土地も亡くなった男性の所有。
親族とは数十年間音信不通だった。
警察から連絡が来て、ここに住んでいた事を初めて知った。
男性と遺族の間に何があったのか、興味はあるが、尋ねる事はない。
遺族はこの土地を直ぐに売って現金を欲しがった。
トラックから降りると深呼吸した。
子供の頃から雪の匂いが好きだったからだ。
家を見ると、予想通り一目で元気が無くなった。
ボロボロだ。
家は頽廃の雰囲気に包まれていた。
手入れをする、いや、しようとする気配を全く感じられない。
こんな雰囲気、誰も好まないだろう。
家の内部も頽廃、陰と負の雰囲気が濃かった。
こういう所は気が滅入って良くない。
とにかく何も考えずさっさと終わらせるに限る。
燃える物、木材、金属、その他、テキパキ分けてトラックに積んでいく。
暫くすると、一人が私を呼びに来た。
「社長の好きそうな物がありますよ」
頽廃と崩壊に満たされた家には場違いの物があった。
茶色の木製と思われるケースが6個あった。
?
それぞれ蓋を開けると、トイガンが入っていた。
!
ルガーだった。
赤いベルベット風の内装に1丁と予備マガジンが一つ入っている。
4,6、8インチが2丁づつだ。
一つは金色、もう一つは明らかにブルーイング。
金色の方は間違い無い、ZEKEの真鍮製だ。
ブルーイングの方はタナカのエアガンをブルーイングした物だ。
鏡面仕上げの研磨、それからブルーイングして漆器の様に仕上がっている。
黒の透明感は誰が観ても驚くだろう。
えっ・・・こんなの売りに出すの? いわゆるヲッサン世代にとってミッキーさんは『神』と同列・・・(か?)。そんな方の記念の品が手に入る(カモ)ですと。 問題は後世に続くか?だよな〜。ウチは私がオダブツになった場合、大量のガラクタ達は次男がなんとかすると思うから、ミッキーさんのお宝も少なくとも次の世代には繋がる(と思う)。 『オトコのロマンは女の不満』と言いますから、自分が亡き後、大切な大切な宝物をアッサリと処分される危険性を多くの家庭が抱えてるカモ・・・こんなの捨てられちゃたまったもんじゃないし。 で、だ! いくらなら出せる? ん〜・・・まぢで今お金無いし。 ただ、200ドルは出せる。300も・・・ でも・・・そんな安くていいの?とも思う。