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懐かしのスモーキン ホール










  SMOKING HOLE by Ichiro Nagata


スモーキンホール、エレン ハリス。

才能ある若手ガンスミスとして急速に名が知られつつある。

IPSCやスティルチャレンジ用など、スピードガンをメインとして造る。

エレンのワークショップから生まれる銃はどれも未来的なディザインだ。

マシン加工の技術も高く、ダンスキークラスだと評価されている。

次世代のソーコムピストルの開発に関与するというウワサもある。

エレン ハリスが好む素材は、やはり来世紀の銃と言われるSTIのフレイムだ。

エレンの腕にかかると、STIのフレイムもさらに宇宙的に変貌させられる。

性能がスゴイこと。そして、カッコもすごいこと━━若きエレンは、そんな銃を夢みて造るのだ。


どうも、この頃のワシはナサケない。

ビアンキカップで弱いのだ。

新たなる挑戦などと言って、オートなど振り回しているが、イマひとつ冴えない。

これではイカンと、あせってしまうよ。

ムカシ昔の、そのむかし。若いころ。

アメリカで生きるんだと頑張って、ワシは日本を飛び出した。

生活は苦しかったが、銃を撃てる喜びが心を支えてくれる日々が続いた。

やがて、ワシはGUN誌に銃のリポートを書き始めた。原稿料は、表紙フォトも入れてナント180ダラ。フィルム、現像、交通費、レンジ費、謝礼など払ったら赤字という過酷な仕事だったよ。

リポートを書くったって、ワシも無知で、ただ、自分の体験や感想などをトートーと書くくらいしか能が無かった。ガンのデータだとか、メカニズムだとか、歴史だとか、そんなことにはトンと興味が無かった。ただ自分のガンに対する熱い思いを個人的に表現するだけのことだった。

そんなシロート記事だから、当然のように銃の専門の人や、ガンの先生っぽい人達からは非難された。嫉妬もかなりあったナ。

が、“新鮮だ、オモシロイ!”などという激励もたくさん来た。新しい世代のファンからは支持があったのだ。ありがとう。

ケンなどは遠路はるばるやってきて、ワシを元気づけてくれた中の一人だったよ。

食えるほどはヤレンが、ギャラの少しは払ったろかい━━と、ベンツだポルシェだとリッチに買いこんだ景気の良いガン誌が言ってくれたので、ワシは真剣に考えた。

···今の自分は銃に対して無知そのもの、その上、銃の撃ち方さえ知らない···銃を一梃渡されて、それが良い物なのかダメな物なのかという判断さえもつかない···他の文献を読んでは恐るおそるホめたりケなしたりするようなリポーターではダメ、自分の眼力でズバリと核心をついたコメントを書く━━そんなリポーターにならなければいかん。そのためにはポリスと付き合い、試合に出てシューティングの腕を磨くのだ。そうだ!射撃なヘタなヤツが、どうして銃のリポートを書くというのだ!銃を満足に撃てない男のリポートをファンに読ませるなんて裏切り行為ではないか。ガンバルのだ!━━

ワシって、イガイと責任意識が強いので、もうヒッシに射撃道に凝ったよ。

ポリスシューティン、FBI射撃、コンバットシュート、もう思い切りノメリこんだ。

そして、ビアンキカップだ。

精密派もスピード派も遠距離派も、あらゆるハンドガンナーが集まって試合をし、その年の拳銃大王を決定するという闘い。

なんという素晴らしい試合だろう······。

こいつに挑戦できる人生は輝きだ!

死ぬまで闘うのだ!

ワシは、ファンの前に恥ずかしくない腕を持とうという初志をエナジーにして、ヤナギの葉に飛びつくカエルのようにビアンキカップに熱を上げたよ。

勝ったからって偉くはない、負けたからってミジメではない。

他人が出来るなら自分にもできるハズ、

自分が出来るなら他人にもできるはず、

勝ってイバる人間、負けてショゲる人間、彼らは価値観の狂ったチンケな心の持ち主だから影響を受けてはいけない。

人に優劣なんて無いハズだ。優劣という言葉自体が、人間の作りだした妄想なのだ━━

そんなふうな考え方をもったワシは、勝っても有頂天になることはなく、負けても心静かでいられた。

誰が勝とうが、誰が負けようが、自分が今こうして試合場にいて、拳銃を撃った━━という事実に自分の存在価値を感じるのだ。


して、そのビアンキカップもハヤ15年。

よーく撃ったもんだ、ねっ?その長さだけは大したもんだろ?

でも、ここんとこ、どうもワシは自分がダラシないと感じている。

目標の1920点に遠いものを感じ始めたのだ。

負けている心━━これがダラシないのだ。

言いワケなら一人前にあるんだよね。

仕事が忙しくて練習できないしイ、 練習弾を買うカネも不足しているしイ、ビアンキカップはカネがかかってヤッてられないしイ···もう、自分を殴りたくなるぜ。

人は、誰でも「沈滞の波」に呑まれることがある。元気がない、調子が悪い、なにかやってもウラ目に出る━━ワシにも、そんな状態が続いている。

そんな、最近、

ハンドガンナー誌の撮影があり、そこで、ある男に会った。

エレン ハリス、という若いガンスミスだった。キラキラというより、テラテラとしていて、ホルモンがたっぷりと充塡されたような元気ある男だった。

「スモーキンホール」という社名は、すでにシューティング界では有名だった。ここの銃はフツーとは違っていた。ディザインがメチャ凝っているのだ。宇宙的、未来的、斬新で個性的で美しかった。

エレン ハリスは、そのオーナーだ。

ワシはエレンの新作、スピードガンを楽しく撮影していた。その時、エレンが聞いた。

“···イチローさんってビアンキカップについては詳しい方ですよね?”

そんなふうな、フレンドリーで丁寧な言い方だった。

“ウン、15年目になるからね”

“そこでなんですが、何がカップガンの条件なのか教えてもらえませんか?”

エレンの輝く瞳は真剣、ただ話題を作るために聞いているという風ではなかったのでワシもマジメに答えた。

“50ヤードで最低2インチの集弾性。パワーファクター120のタマを5,000発撃って一度もジャムしない信頼性。ウィークハンド撃ちがあるので、強く握らないとジャムするようなムカシタイプのメカではダメだし、バリケイドに当てて撃つので、トゥリガーとスィアは並みのモノではフルオートになったりするんだよ。それでもトゥリガープルは2パウンド以下でないといけない···それと細身なシュラウドが必要だな···”

“···50ヤードで2インチですかぁ、コンバットシューティング用とは違うのですねぇ···それでタマは具体的にはどんなチャージでいくのですか?”

“115グレインのジャケテッドが主流で、こいつを秒速1,150フィートで飛ばすんだよ”

“マイルドなタマを使ってノージャムですか···そいつはガンスミスにとって大きなチャレンジですねぇ···”

“ウン、真のカップガンを作れるガンスミスは、アメリカでも数人しかいないね”

“ウーン···そうですかぁ···”

エレンは、視線を遠くに泳がせながら考えこんでいた 。

···拳銃の限界を突破し、宿命を超えなければ完成できないビアンキカップガン。そいつを造る気だ、この男···

そういう直感があった。


次の週、デンワがあった。エレンだった。

“どうしてもカップガンを造りたいのですが協力してもらえませんか?”

ずっと、そればかり考えていたというような熱いものが語調にあった。

“ゼッタイに良い物を造りますから、カップで使って下さいませんか?”

“ウーン、それには今の銃、ナウリンとの関係をやめなければならないのでモンダイがあるけど、ま、来年なら考えてみようかな···”

“いえいえ、来年でなくて今年の話です!”

“オットット、待て待てエレン、今年のカップまで40日しかないのダゾ。仮にたった今銃があったとしても遅すぎるのに、どうして間に合わせるんだ。ダンスキーやナウリンだって3ヵ月も待たせるのに···”

“一週間だけ下さい···造ります!”

こりゃ手がつけられんな、と思う一方、その情熱とヤル気になつかしいものを感じた。

“じゃ明日返事するよ、でも期待しないで”

そう言ってデンワを切った。

そして考えた。···1週間だって?きっと寝ないでやる気だ。エレンの頭にはカップガンが充満しているんだ。気持ちは判る。でも急にナウリンを使わないと断ったらどうなるんだ?ナウリンは最高のカップガンだ。それも無料で使わしてもらっているし···それはともかく エレンが造るカップガンは動くとは考えないほうが良い。ダンスキーと同等の機械工だというが、初めてのカップがスンナリと動くとは思えない。改良を重ねて少なくとも半年はかかるハズだ。ここは説得して来年から実戦参加というのがいいな、うん、そうしよう······そう決めた、が、また考える。

しかし、あの、ほとばしる情熱。それも、勝てもしないと判っているワシのような1.5流のシューターを選んで撃たせたいなんて、なんだかイジラしい······どうせ今年も練習不足なこったし、来年に夢を託して、ひとつエレンのカップガンと心中するか━━ウーンそういうストーリーも人生の一幕にあったってジェンジェン悪くないぞ······


“OK エレン、GOだ、GO GO GO!”

翌朝、ワシも元気よくデンワした。

エレンのショップに行き、希望を言ったり手伝ったりした。

本当に一週間後、スモーキンホールのカップガン1号が完成した。

カクカクとしたスライドは戦闘機のイメージだった。「ステルス」と名付けた。

雨の中、すぐに50ヤードでテスト。ホーナディのXTPというマッチ用ブレットで2インチ内に集弾した。

だが、撃つたびにブラストが顔にかかる。砂を叩きつけるような痛さだ。これは、シュラウドが前過ぎたからだった。コンプから上に出た燃焼ギャスがシュラウドの内側にもぐって後ろに吹き抜けてくるのだった。

すぐに送り返す。二日後には直って来た。しかし、ジャムが多い。その原因は、ケイスを引き抜くためのエクストラクターにあった。リムレスでも通常の.38スーパーでも使えるエクストラクターだったが、じっさいには通常ケイスは使えない。追っかけるようにスターライン社が3,500発のリムレスを送ってくれ、それを使うとジャムは激減した。

だが、マガズィンにもモンダイがあった。

ときおりタマがスタックして上がって来ないのだ。STI社の.38スーパー用マグは、ヤヤ太過ぎるらしい。大至急、ストレイヤーヴォイトのマグを買った。以後ジャム無し。


とまあ、ハナシを短くまとめたが、じっさいはアセアセアセの連続だったよ。

ようやく銃が動きだし、心おきなく練習できる状態になった、が、練習日はもうたったの4日間しか残っていなかった。

短い時間、精一杯練習しよう!

ワシはガンガンと撃った。ケンやトモ達よりもウンと多く撃ちこんだ。

ケンショー炎もなんのその、雨の下、シビレる腕で撃ちまくったよ。

本当の狙いは来年でも、今年ソコソコの成績を出しておきたいと願ったのだ。


出発まであと二日、という日だった。

ガシュ!戦闘機が失速した。

ケイスは抜けない、スライドは動かないという未体験のジャムだった。

分解すると、バレルをフレイムに結合させる8文字形のバレルリンク、アレがまっぷたつに割れていたのだ。

急いでミッキーからリンクをもらって取り替えようとした、ら、これが合わない。エレン流のリンクで、穴が楕円形になっていた。リンクの働きを遅らせることでバレルとスライドの結合時間を長引かせ、それによって命中精度を上げようというものだ。が、そんな必要があるとは思えない。しかし、エレンのヒタスラな工夫には好感が持てる。

細いヤスリでシコシコとリンクの穴を拡げて、やっとフィットできた。

よしよし、リンクさえ交換すればダイジョービよ。そしてまた練習、練習······

なんて考えながら、ベートーヴェンのエロイカ3楽章などを口笛で吹いていた。

リンクを装着、オイルを軽く塗る。バレルのチェンバー下部にあるラグに太めのヘヤが付着していたので、布で拭き取った。拭き取ったのにヘヤはこびり付いている。ゴシゴシと拭く。取れない。

なにっ! なんだ?

指先で触った。それは、ヒビ割れだった。

葬送行進曲が流れた。


“エ━━━━ッ!? バレルラグにクラックが入ったですって?間違いでしょう?そんな話は聞いたこともありませんよ”

エレンはギョーテンしていた。

“まったく、ワシも聞いたことがないよ”

臨戦態勢のようにエレンは待機し、モンダイが起こるたびに即座に動いて解決してくれていたが、バレル交換となると時間が必要だった。しかし、試合は近すぎた。

“······で、どうします?”

エレンはショゲていた。

“ウン、ここにナウリンがあるから、それで練習するよ”

“そうなるでしょうね···”

“だけど、試合はスモーキンホールで撃つ”

“エッ?”

“クラックはワンサイドだ、両側じゃない。試合に必要なタマは192発。それくらいならラグは持つと観たよ。モチロン、48発撃つたびにチェックしながらだけどね。でも、何度も言うように試合で勝つなんて可能性は無いからね。銃は良くてもトゥリガーを引くヤツが未熟なんでね···”

そう言うとエレンはホッとしていた。そして語りはじめた。

“···じつは、僕がシンマイのころです。ハンドガンナー誌でパワーカスタムタイフーンの記事を読みました。そのディザイン、あの美しさに感動し、僕も立派なカスタムを造るんだと決心したのです。それ以来、いつもいつも僕の心には、あの輝くタイフーンの姿が投影されていました。そして、いつの日にか自分で造った銃をタイフーンを生んだイチローナガタに撃ってもらう━━そんな夢を持ったのです······”

それを聞いて、ワシはビックリした。

テレくさい反面、こんな若者が知らない所で育っていたなんて嬉しいことだと思った。

“エレン君よ、君のようなカケダシの作品をワシに使わせようなんてゴーマンじゃないのかね?このワシには、あの立派で高名で最高のナウリンがあるんだよ、ん?もちっと自分をワキマエたまえよ”

なーんちゃって言ったりしてたヒにゃ、もう自己ケンオしちゃうハメだったよ。


そして、ミズーリ州のコロムビア市に飛んだ。ビアンキカップの会場、グリーンヴァリーレンジだ。さっそく24発撃ってみた。そして分解チェック。ラグのフレイムに当たる部分がつぶれてグチャッとなっていた。このままでは危険なのでヤスリで削って、クラックの無い側だけがフレイムに当たるようにした。これなら、あと千発は撃てるという感があった。しかし、50ヤードのグルーピンは手のひらくらいに広がってしまった。

片肺飛行のステルスは、攻撃力も失った。


“ヘイ、イーチ、この銃を使ってくれ”

ミッキーファアラとジョンプライドがやってきて1梃ずつカップガンを渡してくれた。スモーキンホールの一号機にヒビが走っていることはアレヨという間にカップシューターの間に広まっていた。

あまり付き合いの無いシューターまでやってきて、自分の予備銃を貸したいと言う。

射撃仲間っていいもんだなぁ、と思った。


ジョンプライドとミッキーの銃は、せっかくだから練習に使わせてもらった。

だが、ステルスを使う気持ちには変わりがなかった。

これはバカな決定とは言える、が、ワシなりの理由があった。

決してエレンの心に義理だてしてのことではない。

ワシの狙いは、1920点、つまり満点を出すということにある。それ以外の点数では意味がないのだ。そして残念なことに、今年のワシには、その技術が無い。48発を撃つムーヴァーで、どうしても3発ほど外してしまうというのがプラクティスの結果だった。

初めから投げている━━というんじゃなくて、自分の技術を知っているということなのだ。15年も撃っていれば、ビアンキカップの難しさは骨身に染みて判ってくる。

練習試合を20回撃って、20回満点。

この事実無しに勝利を期待するとしたら、そのシューターは自信過剰なのだ。

今のワシは、10回に一度のクリーン率。ハナシにならない低水準なのだ。

どうせクリーンできないのだったら、来年使うハズの相棒、ステルスと一緒に撃つ。そして試合のフィーリングをつかむんだ。


そして初日、バリケイドを撃った。

シュラウドを後退させたので、握り慣れないものがあったが良い感じで撃てた、のに、35ヤードで一発を外した。狙点は真ん中だったのにパシンとタマが上に飛んだように見えた。これは、多分、銃のせいだと思う。


二日目、プラクティコォと対決。

強敵のウィークハンドを、それこそネジ伏せるようにクリーンし、元気いっぱいに撃ち終えた。しかし、50ヤードで一発外れ。これは、ワシなのか銃なのか不明。


三日目はプレイト。これは、キレイにクリーンできた。が、あとでクレイムがついて失格となる。グリップの底につけたアングル調整のギミックが違反だという。試合の前日にルール変更の発表があったそうだがワシは知らなかった。NRAも発表のしかたに不備があったので正式に抗議してくれれば会議にかけて失格を取り消してくれると言う。が、ワシはそれを断った。メンドくさいのだ。

“モッタイナーイ!モンク言いましょう”

と、ガン誌のヒカル君が騒いでくれた。

しかし、すでに-4という失点があるのだから、もったいないなどという感覚はゼンゼン無かった。

他人から観れば、ズタズタのビアンキカップかもしれないが、長い勝負を考えているワシにとってはアッケラカンなのだ。


そして、ラストはムーヴァー···。

長年の宿敵、ムーヴィングターゲット!

今回は、どこまで迫撃できるのか楽しみだった。自分なりの攻略方法を考えて、そのスキルを身につけている途中なのだ。

ドクン、ドクン、心臓の鼓動が上がる。

アドレナリンが身体を駆けめぐる。深呼吸をくり返して酸素を体内に送りこむ。

パワー全開。

“来い!”

10ヤード、ターゲットが走る。ステルスのダットが早くもターゲットを捉えた。Xリングにロックオン、スイッチが入る。

ズダン、ダンダンダンダンダン!

執拗に追いながらの6連射。激発で鋭く揺れるステルスを必死にコントロールする。

またハンズアップ、

左からターゲットが走る。

神経細胞が一斉にザワワと動く。入魂の一発を6回放った。なんとかクリーン。

15ヤード。

難しいステージだ。わずかな乱れがあるとポーンと外してしまう。それにカップのターゲットは、センターに黒丸などのような狙点が無いので、「さぐり撃ち」のサイトピクチャーが必要。これは練習ではやさしいがプレッシャーの下では混乱を起こしやすい。

ワシは、細心の注意をはらいながら懸命に撃つ。もうムーヴァーとの対決にドップリと浸りこみ、他は何も見えない感じられないという状態だった。練習では決して体験できない「本番」の世界。それは空白のようでもあり、濃密でもあった。

この異常な精神世界を体験したがためにビアンキカップにハマッたともいえる。

今年の練習では15ヤードをモノにできていた。クリーン率が高かったのだ。立ち方、構え方、ドロウ、追従、ロックオン、トゥリガータッチ、リコイルからの立ち直りなど、綿密に掘り下げてあった。

ワシは演習どおりに撃てた。

きれいに15ヤードまでクリーンした。

さてさて、20ヤード。

これにワシは悩まされている。

そのムカシ、20ヤードは得意のステージで楽々とクリーンしたものだった。距離は近いし、3発撃てば良いのだ。15ヤードの6連射に比べたらハルカに楽だ。なのに今のワシは20ヤードでのモード切替えが出来なくなっている。ここは、こんなふうに撃とう━━という決まったものが無いのだ。作戦も戦法もなく、ただ撃たされてしまうのだ。

それでも、ワシは頑張って両手を拳げた。

ターゲットが走る。抜く。ロックオン。

ダーン、ダーン、ダーン、

···うー、なんと醜いトゥリガープル···

自分で呻いたよ。

10点圏ではあったが、明らかにコントロールを失ったグルーピンなのだ。

ビビっていた。恐れる心が身体を固くしていた。次のストリングもなんとか撃てた。だが、3回目。落ちついて放ったハズの初弾がバシンと上に大きく反れた。そしてさらにまた一発······外れるのは一瞬。アッという間に勝負がついて、気がついたら負けている。

勝負は一瞬の間。だが、そこに至るまでには長い思惑とストーリーが展開され、その結果が一瞬のカタチとして出るのだ。

当たりか外れ、その結果に能書きをたれるのはヘンだと初心者は思う。だが、それは思考力と観察力の欠如でしかない。人の意識下に潜むものは、複雑そのもの。ただ、その現れ方が単純で一瞬なだけなのだ。

ワシの場合は、「恐れ」だと思う。恐れとはビビリのこと。それは、負けの感情。

ワシのことを、強い人間だと思っている人は多い。自分の道は自分でドライヴし、世の常識にはとらわれず、自由に逞しく生きている人生の闘士━━そんなふうに言われることがある。

だが、こうしてビアンキカップという場で自分の闘いぶりを観るかぎり、皆さんの考えは間違っているとしか思えない。

ムーヴァーに対峙したとき、ワシの正体はまる出しになる。プレイトなどのような簡単なステイジでは冷静な攻撃者。強く鋭く撃つのだが、ムーヴァーの前に立たされると、震えオノノキの弱虫でしかない。

ま、人間ってのは心の弱い動物なんだからガッカリはしない、でも、もちっと平静な心で闘いたいもんだ。と、思うんよ。

で、結局のところムーヴァーでは3発を外して終わった。

来年、この3発を10点リングに撃ちこむには、いったいどうすればよいのだろう?

まずは練習だ、が、これが難しい。

ようするに、カネとヒマなのだ。

一日ミッチリと練習すれば700発は撃つ。すると5千円はかかる。10日間で5万円だ。しかし、それくらい撃ったからってほとんど上達しない。

3万発は撃たなければ、アホなワシの腕は上がらないのだ。

でも、本格的にムーヴァーの練習をしようと思う。今やらないと、もうトシだしね。コレクションなど売り払ってでもビアンキカップに挑戦しようと考えているのだよ。


1999年5月、恐怖の大王が地球に舞い降りるための用意にかかるであろう。

だが、そのころイチローオジサンもコロムビアに格安キップで舞い降りるであろう。

ビアンキカップは震撼し、彼はムーヴァーを蹂躙し征服し尽くすであろう。

それを有線放送で見た恐怖の大王は、次世紀の試合も楽しみになってしまうであろう。

地球人もまだ面白いと思った大王は、あと千年はホッとこと思うであろう。

ウソで儲けたゴトーさんはイーチにタマを買ってくれないと病気になるであろう。


━━イチトラダムスの大予言より━━

あははは、じゃ、またね! イチロー


━━コンバットマガジン1998年9月号より━━




で、そのスライドはまだ元気なので このように使っています けど、フレイムはどこにあるのかなぁ? マロンパや シリアルを見つけておくれよ🙏


by 依頼したとはいえ、

たのんでもない闘作なんかされてメンドクサイけど

載せたワシだけど市おう感謝しているボク


アリガトリィ 🙇‍♂️

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