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FBIスナイパースクール

更新日:1月17日

⇩これ観てよ


中国による台湾侵攻を防ぐ方法はあるだろうか?


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1996年春、

PASO ROBLES(パソロボと発音)のホテルに集合。

朝、ホテルに泊まっていた各警察署のスナイパー達が大勢、それにFBIの教官ら数名が食事をすませてホテル前に集結した。教官の隣には警察でもFBIでもない民間人のイチローが SIG550 のケイスを置いて談笑していた。

どうしてソノようなことが可能になったかの詳細はいまだに謎となっている・・・。


しかし、後になってイチローが自衛隊の富士学校に依頼されて陸自スナイパーの立ち上げに直接関与するとは本人さえも予想などしていなかった。



   FBI SNIPER COURSE



“···最高と呼べるライフルが欲しいもんだなあ···” と思ったのは、アメリカの生活にすっかり慣れてきたころだったんだよね。そうもう15年も前のことさ。


最高━━と、言っても、金とか銀とか彫刻なんかで値段を上げたゼータクで高価な銃じゃなくてさ、自分の目的にピッタシな銃という意味なんだよ。


つまりそれは、一言でいえば「闘える銃」のことだな。


で、その闘いというのはね、自分と家族をはじめ、さらに、となり近所までも広範囲に守る━━そんな闘いということなのさ。


自分の家だけ守るのだったらハンドガンのほうが適している。が、たとえば近所で事件がおこって、犯人が人質をとった、それが100mのカナタだった、なんていうときには拳銃に出番はない。遠すぎるのだよ。


そんなときに威力を発揮するのはスコープの載ったライフルよ、これしかない。これならば100m先のゴキブリのヒゲだってカットできるってもんだよ。で、レミントンのボルトアクションをまずは買ったものさ。


ケッコーこれで初めはごきげんでさ、家の中から近所の庭など狙ったりしてイメージトレイニングなどやって、来るべきその一瞬にそなえてがんばっていたわけだよ。「来る」というのは「きたる」と読んでくれよね、どーでもよいけどさ。


で、だけど、そんなことやってるうちに、だんだんと疑問がわいてきたんだな。


ボルトアクションは一発撃つたびにボルトを引いてヤッキョーを抜き、ボルトをもどして装塡しなければならない。それも5連発でしかない。かったるくないか? と感じてきたわけさ。人質を捕った犯人が一人という状況だったらそれでよい、が、ヘルスエンジェルスが集団で攻めてきたらどうするの?


バレホギャングなどがワーワーと攻撃してきたらどうするの?


そんなことだってあるぜ。さらにだ、ムカシ、こんなこともあった。


日本がドイツとイタリアと組んでアメリカとの戦争を始めたのだ。半世紀も前のことだけどね。そのとき、アメリカには世界中からきた移民が住んでいたんだが、アメリカ政府は日系アメリカ人だけを強制収容所にほおりこんでしまったのだ。敵国という意味ではドイツ系もイタリア系も同じなのに、東洋の日本人だけをターゲットにしたのだよ


この件に関しては、アメリカ政府も今は後悔してワビを入れたりカネを払ったりして、もうけっして人種差別はしないと約束などもしちゃっている。だから安心なハズ。だからアンシンのハズ···だが、ワシは安心ではないのだ。


人間というものをよくよく観ていくと、人種間の憎しみというのはけっして無くならないというのが現実のようなのだよ。お互いがうまくいってるときは良いが、その幸福バランスが崩れると必ずマサツがおきる━━ そんなふうに人間はできているのだな。


これは善だとか悪ではなく、人間がそれぞれに生き抜くための本性なのだから、そこは理性で認識しちゃうしかない。


で、いつかは「日本人狩り」が再発する可能性が無いとは言えない━━という情報を脳にインプットしたわけだ。したら、ズジジジジジジ ピピピと前頭葉が回転して、生存の方法を提案してきたのだよ。



★多弾。


★高精度。


★頑丈。


コノ条件ヲ満タス銃ヲ得ナサイ。



今が平和だからといって、明日も平和だとはかぎらない。来週も半年後も多分平和だろうが、5年後はもう判らない。平和な時に闘いを考えず備えもしない人種は戦争の渦にまっ先に呑み込まれる。なにが起こるか判らないのが人の世だから、せめて自分を守る武器くらいは最高の物を持ちなさい。むざむざと抵抗もできずに殺されるよりは、徹底的に闘いぬいて死ぬほうを選びましょう━━ワシの生体コンピュータは、そう判断したよ。



つまり、より強い防御とは、より高い攻撃力ということになるようだ。


そんな要求を満たす銃となると、もうアソルトライフルの分野でしかない。


一梃の高性能な軍用ライフル。


敵を倒すために生まれた闘士。強力で獰猛で、そして知的な相棒━━そんな銃をワシは探したのだよ。


アソルトライフルというのは各国がそれぞれに開発していて種類が多い。どれが良いのか 情報を得るために、仲間のガンリポーターやFBIの専門家などに聞いてまわったんだが、SIG 550というスゥイッツァランド軍の銃が常に話題になった。アソルトライフルに関しては専門だというフランク ジェイムスというリポーターは、こう断言した。


“そりゃ決まってるよ、カネが無ければアメリカのM-16さ。あれは安くて良い。ミリタリーライフルの傑作だよ。そして、値段を気にしないというのだったらスゥイッツァランドのSIGだ、これしかないよ。SIGに太刀打ちできる軍用銃はないぜ、値段はすごく張るんだけどな···”


FBIのスナイパー、デイヴ ウエバーはこう言った。


“アソルトライフルの最高峰━━それはSIG以外にはまったく見当たらない···”


軍用ライフルについて話をし、SIGを話題にしない場合、それは彼がSIGを撃ったことがないかまったく知らないかのどちらかのようだ。この、現代最高の銃はアメリカには3千梃しか輸入されなかった。その時点で輸入禁止になったのだ。


今、SIG 550を買うとなると、まず探すのが難しい。その上、値段は本体だけでも60万円もする。ちなみにM-16系をセミオートにしたものは8万円だ。この破格な値段差を前にしてもSIGを買う価値はあるのか? 60万円あればAR-15とH&Kとシュタイヤーの3梃が買えちまうのだから、たいていのヤツはビビッて買わない。そして、その判断もけっしてまちがいではないと思う


だが、ダガダガ、だがっ、ワシはこーたんだよね。



武器は最高の物を持ちなさい━━なにしろこれが脳からの命令なのだからね、アラガイようもないのさ。


だいたい、物の価値というのは、カンテーシやセンモン家達が決めるのではない。それを使う自分自身が決めることだ。その値段がどこそこならもっと安いだとか、そんなこともカンケーない。今、目の前にある物に対して自分がいくら払えるのか、そしてその価値を自分でどのように見いだすか━━その一点に尽きるのだっ! なーんちゃってワシもエラソーに言うわ。


さてさて、


SIGがやっとウチに来た日、あれは7年前のことだけど、ワシは熱かったな。


ズッシとくる重量感。


嬉しくて嬉しくて、ニッタニタと笑いが止まらなかった。


その、たたずまいの端正さ、美しさ。


肌に触れたときの感触の良さ。


ボルトを引いたときの高品質な響き。


トゥリガープルの確実感。


軍用モノにありがちな粗さや手抜きがなくて、高級そのものという風情なのだ。フージョーでなくてフゼイと読んでよねコレ。


テストファイヤをしたら、またまたもっともっと好きになった 撃ちやすいのだ。それも当たるなんてもんじゃない、200m先のテニスボールをズボズボなんよ。カンゼンにイッたよね。これしかないんだと思ったさ


ホントにホレたよ。


それからというもの、いつもSIGを身辺にはべらしたよ。突然ケイスを開けてSIGを取り出し、窓から200m先の花やなんかに狙いをつけてさ、“ホレッ犯人ヤロー、人質をとってみんかいっ!エンズイをくだいたるさかい!”


と、リューチョーに近いカンサイ弁で他人に聞こえないように怒鳴ったりしてね。それが 20秒以内にできたってんでマンゾクしたりしたもんだよ。


それからずーっとずっと月日はたった、がSIGの出番はいっこうにやって来なかった。


アメリカ政府は日本人を大切に扱ってくれるのでなんら抵抗の必要もなくてさ、こうなったら北朝鮮のスパイ 軍団がサンフランスィスコ湾に攻めて来んかぎりはSIGの働きは見られないという平和な状況だった。




そうしたある日、FBIから手紙が届いた。


スナイパースクールの招待よ。


SIGをさげて訓練に参加しろというデイヴ ウエバーの誘いなのだよ。デイヴはシカゴから 助っ人にやってきたプロのスナイパーで、スナイパー班のチーフなのさ。それもFBIだぜエフビーアイ···そこらの警察ケーサツとはワケがちがうってもんだよ。


なんでイーチなんかにそんな招待が来るのかだって? ナハハ、その理由はチと言えんのでカンベンだぜい。


ワシは、FBIのスワット トレイニングを2年間も受けたが、その間にスナイピングも習ってはいた。


距離の変化と弾着点の関係を読む練習。風が弾道に与える影響。犯人をスコープに捉えるテクニック。指令に従ってトゥリガーを機械的に引いてヘッドショットする訓練。そんなことを習得した。だから、スナイピングの基本はイチオー判っていたんだ、が、まだまだ充分とは思っていなかった。


超一流のスナイパーが教えるというFBIのスナイパーコース━━これだけはどうしても受けたかったのだよ。


とりあえずは一週間のクラスでスナイピンの基本をしっかり習う。それからは年に二回ほど上級コースがあるということだ。


うまい具合に、初回コースのときはケンがアメリカに来ていたので撮影を頼むことにしたよ。クラスを受けながら自分で撮影するってのはシンドすぎるもんね。


というわけで、SIGの出番さ。ケンと二人してカモフラなど着ちゃってでかけたのだ。


キャリフォニアは、ある軍の基地内。だけどあまりくわしいことは書かないようにという要請があったのでカンベンだよ。クラスの内容についても言えないものが多いし、フォトはかなり撮ったけどFBIの教材用に寄付した。ここで発表するのは許可を得たものだけにした。


なにしろ犯人射殺が目的という特殊な世界のこと、その戦略やテクニックを公表すると悪用する者がでてくるのだよ。だから、そこんとこは想像力を働かしながら眺めてくれたまえよ。


クラスは月曜日から始まるが、前日の午後に体力テストがあった。



生徒達は現職の警察官でスワットに属しているスナイピングの担当者。つまり現役のスナイパー達なのだ。彼らはスワットスクールを一通り終えて、仕上げにスナイパースクールにやってくる。


スワットの中で、一番大切なのがスナイパ一だ。現場で彼らが観察して報告してくる内容しだいでスワットの動きは決まる。ただライフルで犯人を狙うのではなく、正しく状況を把握するのがスナイパーの役目なのだよ。


冷静にして沈着、そして鋭い観察力と実行カがスナイパーには必要なのだ。


体カテストといっても走るのが基本で、それも大して早く走るものではない。スナイバ一になるには、あまり若いのはダメで、落ちつきのある年齢のほうがよい、となると体力に関してはあまり言わないわけだ。と、言ってもだよ、岡を越え川を泳ぎ渡りなどしながら8キロを50分くらいは走るんだぞ!ちょっと今夜走ってごらんよ、ケッコー若いモンにだってキクぜ。


この体カテストでは、二人が太りすぎという理由で失格となって返された。


“···あの署はなんであんなブタをスナイパ一にしたんだ!ばかなっ!”


と、インストラクター達は怒っていた。


ワンショット ワンキル━━どんな過酷な条件下でも必殺の一撃を放つスナイパーの世界は厳しい。


太りすぎ、タバコ吸い、酒飲み━━こういった人生を楽しむタイプはスナイパーには向かない。自己を律して厳しく生きる性格の持ち主がすぐれた狙撃手になるのだよ。


ワシは人生を楽しむタイプで、自己を律するどころかカンペキに自分を開放して本能の声を聴きながら生きるタイプだ。でも、さいわい走るのは大好きだ。走ることで新しい想念も浮かび、元気も沸いてくる。だからよく走る。仕事のひとつだと思って週に3回は近くの自然公園を走りまくる。タバコは軽麻薬だと信じているので吸わない。


だから体カテストはモンダイなしよ。


君も健康だけには気を配れよ。いつかはきっと人生のチャンスがやってくる。それをつかみ、乗り移ってチャレンジするときに大切なのは学力などではないぞ。健康でたくましい心と身体━━これなのだからね。



こうして月曜日から狙撃訓練が始まった。



まずはクラスルームで各生徒の自己紹介があり、さっそく講義に入る。講義は少しずつだが毎日ある。弾道学。地形と風との関係。犯人の心理。撃つ側の心理変化。自己抑制の方法。などなど、どれも興味深く、さすがはFBIだ、よーくデータをそろえてあるもんだと感心しちゃったよ。


デイヴのアイサツはこんな内容だった···。


“諸君はプロのスナイパーだ。重大な一発のブレットを放つのが任務だ。そしてターゲットは人間。ある時は命令によって、ある時は自分の判断で人間の命を消さなければならない。このスクールで得た知識と技術は諸君が事件に直面したとき必ず役に立つことだから、しっかり勉強してほしい。いけないのは、いくらなんでも自分には人を撃つ機会がこないだろうと思うことだ。それは、プロとしての心構えではない。最近こんな例があった··· 彼は、このスクールを出た警察官だ。彼の町は人口5000人足らずのイナカで平和そのもの。殺人などは、この十年間というもの一度もなかったし、スワットの必要などないようなところだった。


だが、彼はこのスクールで考えを変えた。


人を撃つのは鹿を撃つのとはわけが違うということ。そして、強靭な意思が必要だということを学んだ。戻った彼は、スクールで決められたことを実行した。


週に一度は自分のライフルを5発撃ち、その時の状況を写真に撮った。同時に、光線の具合、温度、湿度、風向きと風力などのデータをFBIでもらった記録帳に書きこんだ。


いつかはその日がやってくる、と彼は信じて2年間それを続けた。


そしてある日、事件は起こった。


よその州でカネとクルマを奪い、人質をとった犯人が彼の町に逃げこんできたのだ。


犯人はヘリコプターを要求した。


彼は、自分の出番を自覚した。


あらかじめヘリコプターの降りる位置と犯人が通る道筋を読んで、狙撃のためのポイントを確保し、そこに誰からも見えないように身を隠して待った。


3時間後、ヘリコプターが到着し、犯人のクルマも現れた。


犯人は人質を抱えるようにしてクルマから出てきた。


彼は、今、自分のすべきことに専念した。


身体と銃の目然な角度。確実なグリップ。銃と肩の密着。スコープのセンターを使っての凝視。風。気温。太陽の位置。


すべてを点検する彼には興奮で舞い上がる余地も無かった。


やがて犯人は、予測した位置に来た。ヘリコプターに乗りこむ寸前に身体の動きは遅くなり、そのヘッドを6倍のスコープがクリヤ一に捉えた。距離は80ミーター。


彼は、最終確認をしながら呼吸を停めてトゥリガーに圧を加え、前から後ろに引いた。


犯人は倒れる前に死んだ······”



デイヴは淡々という口調で語ったが、それには充分な説得力があった。受講生達の間には感嘆と緊張が流れた。


事件の把握。推移の読み。作戦と行動。


そして、きっぱりとした決断。


スナイパーが放つ一発の弾丸。その背後には長い訓練と努力、そして決意がある。


それを確認したように、生徒のスナイバー達はやる気を起こし、連帯感を強めた。



そして、いよいよレンジに出た。


うわー! 広いっ! と感動した。


ここは戦車とヘリコプターの訓練をする基地なので、その広大さは、はかり知れない。


ミリタリーの射場なので1000mだって撃てる、が、まずは100mでのサイトイン、つまりスコープの調整から始まる。


プロのスナイパーにとって大切なのは、その日の初弾。この一発なのだ。


その一発を「コールドショット」と呼ぶ。


練習も調整もなし。温度や湿度や風や光線が与える弾道変化は過去のデータから出す。


その日の初弾━━コールドショットを狙った一点にたたきこむ。これがスナイパーの任務なのだ。



100mで2.5cm



これが、FBIスナイパーの要求だ。


それはグルーピンだけではない。コールドショットで100mから2.5cmのターゲットをヒットするということだ。


それは、とても難しいことだ。


良い銃と良いスコープ、それにちょっと訓練したトゥリガーフィンガーがあれば、グルービンは出せる。が、コールドショットで狙ったー点をヒットするとなると困難が付きまとうもの。スコープの載った銃は、ターゲットを十文字のまんなかに捉えてトゥリガーを引けば当たるものと考えるのがフツーだが、なかなかそんなものじゃない。


風、温度、湿度、射角などといったファクターが弾道に影響するので、それを読んで狙点を修正する訓練が必要なのだ。



“···では、3発のグルーピンを見せてもらおうか···諸君の銃はプロの道具、それも現役のパートナーだから、すでにゼロインはできているはずだ。だからターゲットのまんなかにキレイなブレットホールをあけることができるわけだな···”


インストラクターは、そう言いながらターゲットを配った。それは赤色で直径7cmのまるいものだった。黒のサークルが3本あり、一番小さいのは直径が25mmだった。


···ち、小さい!···ほんとに当てられるだろうか······


ワシはドキドキした。


ワシのSIGは、こんなときに恥をかかないように、きっちりとサイトを調整し、いつでも撃てるようにしてあった、が、いざとなると心配もわいてくる。


···ここでしくじったら昨日の二人のように追い返されるのだろうか? まさか、それはないだろな···などと考えながらSIGをケイスからとり出し、バイポッドを立てる。


スコープのズームリングをいっぱいにまわして12倍にした。ターゲットをクロスヘアのセンターに合わせて、下のオープンサイトをのぞく。両方の狙点が一致した。


···スコープとマウントには異常無し···


ワシのSIGには特製のマウントが載せてある。スコープを着けてもオープンサイトが使えるというスィースルータイプ。自分で考えてMGCの開発部で造ってもらったものだ。


スコープはタスコのタイタン。それをツヤ済しグリーンに塗ってもらった。タイタンはインナーテューヴの固定部にタイテーニアムを使ってあるので、温度や気圧の変化で狙点が動きにくいという長所がある。ヨーロップの上等スコープ群に対抗できる唯一の日本製だとワシは思う。


さて、SIGにマグを挿入し、ボルトを引いて放した。100m先にある7cmのターゲットを改めてスコープで捉える。タイタンのズームは12倍にしてもクリアーでシャープだ。


風は左横から吹き、秒速3mくらい。


···あー、よかった···と思った。


スナイパーに適したカートリッジ (タマ)は .308だという。その理由は、トータルバランスだ。充分な破壊力を持ち、精度は高く、風にも強く、手に入りやすいからだという。


それに比べるとSIGの .223はブレットが軽いために風に弱く、破壊力も下で、500mの狙撃となると難しいものがある。


だが、300m以内だったら充分に闘える。なにしろ銃は軽くてスピーディー、それに30連のマグでバリバリと撃てるのだ。


タイタンの望遠映像で丹念に草などの揺れぐあいを観察し、自分とターゲットとの間に突風が通ってないかを確認した。


···ボチボチ行くか···そう思ってセフティーを切った。


それにしても、号令が出てからもう5分は経っている、のに、誰もまだ撃たない。やはりみんな慎重そのものだ···と、思ったとき、ダーン! と、近くのライフルが吠えた。


ワシも真剣にターゲットを凝視した。


タイタンのレティクル(クロスヘア)を赤い丸のセンターに合わせる。スコープの筒の周囲を見てケラレがないかを確認。これはスコープの中心部で狙っているかのチェックなのだ。タイタンは、少しくらい端で狙ってもズレはないが、やはり中心部で狙うのがプロというもの。


身体はリラックス、呼吸を静かに停める。


···当たってくれよ······


銃は静止した。トゥリガーの圧を増す。


ズッダーン!


SIGは咆哮し、バッと低く空中に躍動してから地面にもどった。


···当たったろうか?··· スコープでは弾痕までは見えない。


同じ作業を2回くりかえした。


サイトピクチャーは良かった。トゥリガープルもガク引きゼロだった。


皆が3発撃ってターゲットをチェック。


ワシは待ちきれないのでターゲットまで走った。早く見たいっ!。



ターゲットのまんなかに黒い弾痕がみっつ見えた。近くに寄ってじっと確認する。3発のグルーピンは1.5センチ。100ミーターから1円ダマを撃てる精度だった。


合格だっ!


ヤヤッ、やった━━━っ!


ワシは叫んだ。


“ムムム···さすがはSIGだ。すごいっ!


巧いぞイーチ!"


デイヴ ウエバーも喜んでくれた。


さて、ホッとしたところで仲間達の腕前を見物する。


さすがにみんな巧くはある。が、グルーピンがセンターから外れたのもけっこうある。


運搬中にスコープがズレたというかんじで、これはじつによくあることなのだ。スコープとマウントは銃と同じに大切。けっして安物を使ってはいけないのだ。


コールドショットでの3発勝負では、ワシのSIGはベストスリーの成績だった。


“アソルトライフルなんかでなんのジョーダンかって思っていたんだが、そのライフルはすごい性能じゃないか! 驚いたよ”


などと、仲間たちは話しかけてくる。


中には真剣にSIGの導入を考えて、デイヴに相談を始めるスナイパーもいた。


ワシはSIGをさすりながらカンペキに満足していた。


この3発撃ちは、皆がパーフェクトになるまで続いた。ワシはH&K91というG3のセミオートをケンに貸してあったのでそれも撃ってみた。スナイパー用のトゥリガーがついたハイグレイドなヤツだが、どう撃っても100mでのグルーピンは4センチを切れなかった。


それでもアソルトライフルとしては上々のできなのだ。SIGは、まったくバツグンなのだ。


次は、FBIのインストラクターの銃を借りて撃つことにした。H&Sプレスィジョンというところのカスタムで、プロの間では評判の高い銃だ。その銃にタスコがネイヴィースィールズから依頼されて造ったスナイパースコープのプロトを載せて撃った。これはタスコ社からのテスト依頼でもあった。




この20倍のミリタリースコープとFBIライフルとのコンビは、スゴすぎるというくらいカッコよく性能もなんも素晴らしかった。


100mのグルーピンはバシッとワンホールに決まったのだ。これならば500m先のヘッドショットが可能だ。偉い道具だと思ったね。



と、まあ、そんなふうにスナイパーコースは始まったのだよ。


それからは課目がいっぱいで、毎日がぎっしりのスケデュールだった。


相手に発見されやすい色は明るい色、または背後と色調が異なっている色。だが、なによりも目立つのは動くものだから、動くときは気をつけなければいけない。マリーンのスナイバーは、20分もかけて机の上にあるコーフィーを一口飲む訓練をするだとか、そんな講義もあれば、草原に隠された異物を双眼鏡で探したり、隠れたスナイパーがこっちを狙っているのを察知するというジミチな訓練もあった。



FBI教官のフォトを撃てと・・・

目と目の間をクリーンヒット!!


時として突風が吹いた


一番シンドかったのは、スナイパー アソルトコースだった。


ワシはそのコースで満点を出したかったので、相手にジムというモントレイから来た男を選んだ。その男は元気があって冷静で腕前もたしかなので目をつけておいたのだ


“ジム、この勝負に勝ちたかったらワシと組むしかないぜ···” そう言って誘った。


コースは、想像よりもハードだった。


二人組みで塔に登って撃ち、降りて走ってバリケイドから撃ち、そこから300m走ってまた撃つ。息を切らしながらのスナイピンは大変だが、そこまでは皆がこなせる。最後が心臓破りだった。上り角が40度もある山を400m駆け上がって頂上から撃つのだ。たいした距難じゃないとはいえ走り続けることはできない。ゼイゼイハーハー、ノッソノッソとはい上がる。心臓もノドも破れるかと思った。


やっと頂上にたどり着くと、“あっちだ!” とインストラクターが指さす。ハッと銃を構えると何も見えない。“3秒だけだ” とインストラクター叫んだとたん、人の顔(絵)がユッサユッサと歩いて現れた。


“アイルテイク レフトワン!”とジムにわめいて左のヘッドを狙い、撃った。距離は80mくらいだった。ジムも撃った。終わるとヘナヘナと銃をかばいながら倒れこんだ。


二人ともヒットだという知らせを聞いても歓声をあげる余力もなかった。


コールドショットの訓練は、毎朝あった。


風速20mもの風が吹いたりすると、ブレットは3センチくらい横に飛ぶ。しかも風は一定ではないのでなかなかセンターには入らない。だが、そんな苦労を体験するとSIGが頼りになる相棒だという気持ちが深まる。強くて恐ろしく精密なロボットと一緒にいるような感覚なのだ。



ラストデイは、森の中のどこかにいる犯人を探して撃つというコースだった。


これは、空砲を使ったバトルゲイムだ。


ただし、スナイパーのゲイムはルールがちがう。相手は双眼鏡を持った複数のインストラクター達。彼らに発見されたら死だ。だから本格的にコッソリと近づく。カモフラもあの手この手で迫る。100mまで寄れたら撃ってもよいという。


これはエライことだぞ、とワシは思った。


相手はFBIのプロ達。それが双眼鏡で見張っているのだ。見つからないほうがおかしいと思った。でも、これはすごいチャンスだから、真剣にやろうと思った。


合図があった。スナイパー達は散開した。


敵のいる方向は知らされているが、その距離は判らない。


その森に一番はえていそうな草をちぎって帽子に差した。そして、その草のはえているルートにそってゆっくりと進んだ。風で草が揺れると安心して早く進み、草が止まるとソーロソーロと這って進んだ。


30分も行くと、拡声器から指示が聞こえてきた。早くも発見されたスナイパー達がチラホラと立ち上がる。ターゲットまではおそらく300mの距離だ。ワシは超スローな動きで顔を上げて様子をうかがった。メガネが光らないか気になった。スコープのレンズも反射が心配だ。まだ、何も見えなかった。


あと100m進むことにした。


思い切り低くなりながらSIGを抱えてズリズリと進んだ。拡声器の音が近くなった。周囲に潜んだスナイパーが次々に死を宣告されて立ちあがる。


うんと深い茂みに入った。暗がりからソッとのぞくと、デイヴの姿が見えた。立ったまま双眼鏡で見回している。そしてこっちを見た。昔を引っこめたい気持ちだがジッと我慢した。動くのは一番目立つからだ。デイヴの双眼鏡が他の方に向くのを待ってSIGをゆっくりと構えてスコープの照準をデイヴのヘッドにつけた。200mからSIGに狙われたら確実に死ぬ。スナイパーの闘いに必要なのは射撃の腕と体力はもちろんだが、忍耐と細心がもっとも大切なのだと思った。500m先から発見されてもこの世界では死にいたる。いかにして相手に知られずにその姿を捉えるか、そこで勝負は決まるのだ。


ゆらりと沈む。また草の下をはう。


あと100mで射程だ。


100m以内に近づいて撃つという訓練のルールには二つの意味があった。ひとつは、油断のない犯人に100mまで肉薄する難しさを体験し、注意深さを身につけること。もうひとつは、過去の記録からして、都市での狙撃はほとんどが100m以内だったという事実があるためだ。平均距離は70mくらいだという。ちなみに挙銃での撃ち合いは9割以上が7ヤード以内で起こる。


ミリタリーのスナイパーは敵を発見すれば1000mの距離からでもブッ放すこともある。


これは、腕でも足でも当たればモーケの世界だが、ポリスの場合はそうは行かない。ターゲットは凶悪犯人、それも人質を捕っているばあいが多い。撃つからには即死させる必要がある。だから、ポリス スナイパーには高い精度と判断力が要求されるのだ。


ワシは、ノソノソと草の下にそってまわり道をしながらデイヴのいる方に迫った。


···これが実戦で、デイヴが銃を持っていたとしたら、それでもワシはこうしてターゲットに近づくだろうか? 自己保身のために深い藪にもぐって時間をつぶすのじゃないだろうか? 少なくとも恐怖で正常な判断力を失い結局は命を落とすのじゃないだろうか?······


そんなことを考えていた。


···しかし、今、自分はこうして訓練を受けている。ここで得た体験と知識が本番のときは役にたつわけだ···よーし、これを本当の闘いだと思って大真面目にいこう······


と、そう決めた。いっそう耳をすませ、風になびく草の心でゆっくりとにじり寄った。


そろそろ100mの距離に達した、と思ったが頭は出せない。こっちから見えれば相手からも見えるということだ。右の方20mに木があった。そっちに進む。草を揺らさないようにジリジリと動いた。木の下には草が密集していた。その中にもぐりこんだ。


藪の中でゆっくりとSIGを持ち上げてストックを肩に当てた。スコープをのぞきながら緩慢に立ち上がる。セフティーを切った。デイヴの上半身が見えた。双眼鏡で他の方を見ていた。その横顔にタイタンのクロスヘアが止まった。トゥリガーに指をかけた。圧を少しかけた。“よしっ! きまった···”その瞬間、照準をデイヴの頭上に外してトゥリガーを引いた。“ターン!” と、空砲が鳴った。


たとえ安全な空砲でも仲間に向けて発射するのは抵抗があったからだ。


土埃をかぶったSIGからマグを抜いた。


ボルトを引いてチェンバーに残った空砲のケイスを抜きとる。


世界一の攻撃銃······。


そいつを肩にかついでワシは満足だった。


このスナイパー コースの後、ワシはいっそうSIG550を好きになったのだよ。


パソロボの戦車基地より


セルフタイマーをかけてから戦車に飛び乗ったイーチを見つけてホスィ😊


じゃっ! また··· イーチ



━━コンバットマガジン1996年11月号より


やっとオワタ・・・・・・


ではではオヤスミなさーい


o(__*)Zzz


by このトーサクをタイタンさんに捧げて泥の眠りにつくオトコ😪


ご苦労であった、次は最初のFBIスワット訓練を行こうかい😁



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さあ、マロンパや、

ここで心置きなく闘作三昧してくれろい☺️

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